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あの日から何かと口実をつけ俺は彼女の部屋に上がり込んできた。
親友を失くした俺と恋人を失くした瑠璃葉。健太という存在がこの世から消えたことでお互いの胸にぽっかりと空いた穴を埋めあえれば、という思惑があった。いや。俺が琉璃葉で穴を埋めたかっただけかもしれない。
健太が死んで一年ほどは彼女の心はここにあらずだった。泣いてばかりだった彼女に苛つかなかったわけではない。強引に押し倒して健太のことなど忘れさせてやろうか、と思った日もあった。
だけど。彼女の存在が自分の中で大きくなればなるほど、手を出すことが出来なくなった。
多分俺たちの関係はずっとこのまま変わらないかもしれない。友達よりは上。だけど恋人よりは下。
それでも瑠璃葉を支えていけるならそれでいい。俺にとって彼女はそれだけ大切な女なんだ。
ただ今でも時々不安になることがある。
もしかしたらあの時、俺が彼女に手を伸ばした瞬間を見られたんじゃないか。そして俺の気持ちにあいつは気づいたんじゃないか、と。
だとしたらもしかしたら、あれは自殺?
俺たちに裏切られたと思ったとか?
そんな馬鹿な、と思う。
だけどもしかしたら……。
全ては仮定。全ては憶測。
だけどあの日以来、あいつの顔に降り注いでいた雨が今でも俺の中で止まずに降っている。
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