現実とちょっとだけ違った世界

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カラー―――ン・・・ コロー―――ン・・・ 今日の授業は発声練習だった。 ある時を境に、人は大声を出すことをしなくなった。 大声を出すと、周りの人が必ず、あるボタンを押して、環境衛生保全健康促進部隊に連絡をするのだ。 そうすると静かに防護服を着て顔を隠した部隊が現れて、その人を特定して連れてゆくのだ。 大声がさらに甲高い声になると、大きなマスクをかぶせられる。 鎮静効果がある液体を染み込ませたマスクらしい。 そんな日常が、皆の声をどんどん小さくしてしまったというのが、心理学者の見解だが、そんなの子供でもわかるっつうの。 発声練習は、時々大きな遮音室で行われる。 どんなに大声でも、全然響かない部屋なので、歌をうたう人や、叫びたい人もOKなのだ。 さらに、声が良いと認められると、いきなりそこで本を読むように言われる。 意味がわからない。 遮音室に声が流れた。 「L・T君は、とても良い声だ。 このピアノの音に合わせて、声を出してみてくれ。」 「いやだ。」 「それでは隣の、Y・O君。」 ポロロン・・・ 「あ あ あ あ あ~~~~~!」 「いい声ですね、では隣の部屋に行ってください。」
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