現実とちょっとだけ違った世界

3/5
前へ
/5ページ
次へ
その子が歌う隊に入ったのは、TVで知った。 今日も外は静かに移動する人々がどこかへ行く。 どこに行くのかって、そりゃあ労働だろ。 毎日決まったおんなじことをさせられたら、みんな死にたくなるって、心理学者が上に提言してさ、それから毎日おんなじことを強制できなくなったもので、とにかく労働。 いろんな労働。 だから平等。 いやいやな日もあれば楽々な日もある。 今日なんか、ヤギを連れて高原の散歩。 牧羊っていうの、あれは楽しいな。 労働したら、そりゃあ平等に皆が食べるものや友情にも困らない。 便利な世界なんだ。 違うのは、特別なことだけ。 歌う隊もそれ。 芝居隊とかもある。 なんで、隊なのか知らない。 でも・・・俺、困ったことになってるんだ。 「君、L.T君。 君は歌う隊に入ることを勧められている筈だが。」 また壁の向こうから何か言ってくる。 「君達にはそろそろ、連絡が来るはずだ。 もうすぐ君は誕生日を迎え、成人の年齢になる。 そうしたら、仕事はひとつに決まり、他には移動できなくなる。 そういうシステムなのだ。」 「へえ・・・じゃあ俺、牧羊がいい。」 「歌う隊の隊長が、君を是非と言っている。」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加