挟まったままの私たちは

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 おねえ、きれいだなあ。何度も悩んで決めたそのマーメイドのドレスはね、きっとおねえのために縫われたんだよ。真っ白で、きらきらしていて、カナヅチのおねえもスイスイ泳げそう。おねえは「私は変わらないよ」と言ったけど多分、隣の人、そう旦那さんがおねえの大切な内になっていく。今だってほら、漂って離れてしまわないようにしっかり支えてくれているでしょう。内でも外でもない狭間にはもう、おねえはいなくなってしまうの。大丈夫、そのくらいわかってる。わかっちゃいるけど、おねえ、知らない内へ泳いでいかないで。どこでもない狭間の中に、私を置いていかないで。あれ、おねえ人魚になってるよ、カラフルな魚たちがおめでとうっておねえの周りをぐるぐるしてる。待って、待っておねえ。上手く叫べないし、かすれた声しかでないよ。おねえ、おねえ!  しぶきを上げて、波どもはおねえたちを一気に攫っていった。気付けばおねえも旦那さんもカラフルな魚たちもいない。私はただ一人、たぽたぽと揺れる夜の水面に浮かんでいた。  ゆらゆらと心地よかった身体が、だんだんと重みを増してくる。遠くから私を呼ぶ、声がする。
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