挟まったままの私たちは

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「――み、すみ起きて」  肩を揺らして起こしてきたのはおねえだった。勉強をしていたはずなのに、いつの間にかテーブルの上で寝てしまっていた。 「んあ、よく寝た」  袖に垂れたよだれを見て口元をそのまま拭おうとする。その様子を見て「あーあ、もう」とおねえはティッシュを差し出してくれる。ありがとう、言いながらティッシュ受け取り、ついでに濡れている目元も適当に拭いた。 「なんか寂しい夢を見ていた気がする」 「本当? すやすやよおく眠っていたけど。ここ私の家よ」 「おねえの家じゃなくておねえの部屋でしょ」  こういう返しは可愛くないなあと自分でも思うけれど、おねえはいつも笑ってくれる。 「まさか高校生になってまでうちにくるとはねえ」  友達とか彼氏とかいいの、とおねえは続けて聞いた。 「だっておねえ、もうすぐいなくなっちゃうから」  ふいっと顔をそらし、こみ上げてくるあついものに引っ込め、引っ込めと暗示をかける。 「それじゃあまるで今生の別れみたいね」
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