挟まったままの私たちは

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 ふわっと笑った七歳上のおねえとはいわゆる幼なじみであり、私たちは内と外の狭間で育ってきた。「大丈夫よ、すみ」と切りそろえた前髪をぐしゃぐしゃに撫でられる。いつもなら抵抗するが、今日はそんな気になれずうつむき黙り込んでいた。こみ上げてきたものが、瞼の縁でふるふると震えている。するとおねえはふうと息をもらし、首を傾げてこう言った。 「私は変わらないから」  そうして両腕で私を包み、大丈夫大丈夫、と背中をさすった。こんなに胸がぎゅっとなるのは、恐らくさっきまで見てた夢のせいだ。暗示に失敗した私の背中を丁寧に行き来する温もりに、ほろほろと気持ちが解けていった。  おねえはもうすぐ、大好きな人と結婚する。  落ち着いた私が帰ると言うと、おねえは門を出るところまで送ってくれた。 「……お邪魔しました」 「気をつけてね」  すぐそこだけど、とおねえは付け加える。いつものやりとりも少し気まずい。こくんと頷き、二軒先の自宅へ帰る。玄関に手をかけ振り返ると、おねえはこちらに手を振った。 「またね」  子どものころ、よくこうやって見送ってくれたっけ。私は手をあげて「またね」と小さく笑った。
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