メテオ・フィーユはコップの中の嵐

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 しばらくすると、ぼくの意識は徐々に薄れてきており、もうすぐで深い眠りに落ちそうな気配だった。それなのに、突然ぼくの耳に大きなわめき声が聞こえてきたのだ。    その泣きわめきはどうやら上のほうから聞こえてくるようだ。ぼくらの部屋は寮の5階に位置しており、2段ベッドの真上にある天井を突き抜ければ、そこは寮の屋上となる。だれかがいたずらで屋上にでも出ていたところで、用務員さんにバレて天井への入り口を封鎖されてしまったのだろうか。  その女の子の泣き声をようく聞いてみると、その声がよく知っているものだということに気づいた。けれどもそれは、同級生の女の子たちの声とはひとつも一致していなかった。その声は天気予報のキャスターとして毎日テレビに出てくるメテオ・フィーユの声そのものだったのだ。  どうしてメテオ・フィーユがこの学園の寮の屋上にいるのかな、とぼくがいぶかしく思っていると、その声の主はぼくに直接語りかけてきた。  う、ひっく。あ、あのね。わたしもうしっかりと天気予報できなくなっちゃったみたいなの。  ぼくはもちろん、彼女と話すことははじめてだったし、そもそも彼女がぼくら人間と会話できることにとても驚いた。  どういうこと?  ぼくは勇気を振り絞って、はじめて彼女に声をかけてみた。よくよく考えてみたら、ぼくは彼女たちの存在をなにも知らずにこの12年生きてきたんだ。知っているのは、彼女がぼくと同い年ということと、彼女が笑えば晴れ、彼女が泣けば雨がふり、彼女が困った顔のときにはくもりになるっていうこと。  あのね、ようく聞いてくれるかな。この話は知っているかな。12年前にある人工衛星が打ち上げられてね。人工衛星が、もう自力では雨を降らせることのなくなったこの星を助けて、雨を降らせているのよ。  ここまでの話は、気象学を学んでいるぼくからしたら知っていて当然の話だ。  うん知っているよ、とぼくが返事をすると、彼女は少し落ち着き取り戻して話を続けた。
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