メテオ・フィーユはコップの中の嵐

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 わたしたちはメテオ・フィーユと呼ばれる存在というのもわかるよね。やっぱり、有名なんだね、わたしたち。ここからはあまり公にされていないのだけど、ようく聞いてね。わたしたちメテオ・フィーユは実は、雨を降らせる手伝いをしている人工衛星“ウィーピングテンペスト(なきわめき)”に付随するAIの集合体なの。  ぼくは一瞬、彼女の言うことがわからなくて、困った表情を浮かべた。すると、声だけのする彼女はどこからかぼくを見ているようで、こう説明を付け加える。  びっくりしたでしょう。わたしたちは公式でみつごの天気予報士のグループだということになっているから。実際もとになったみつごの姉妹もいるんだけれど、彼女たちはね、ウィーピングテンペストの整備士だったの。あ、それでね、そのみつごさんたちが一斉に寿退社しちゃったもんだからもう大変。小さなトラブルが積み重なってね、7日間もわたし涙が止まらなくて泣きっぱなしなのよ。彼女たちの幸せを見ての嬉し泣きかもしれないけれどね。  そのAIは目の前で談話しているような感じで、そうあっけらかんと大事なことを言った。  このままでいくとあと10日は泣き止まなそう。そうすると降水量が増えすぎて、危険だわ。  え、ど、どうしよう!?  ぼくがあわてふためいて返事をすると、彼女は笑い泣きながらこう言った。  はは、そんなにあわてなくて大丈夫よ。あなたにお願いがあるのだけれど、それを聞いてくれればすぐに降水量は減るから。あとでメモをわたすから、その住所に行ってあの子たちに伝えてちょうだい。バイバイまたね。  ふと窓の外を見ると、雨雲のあいだからうっすらと光が差し込み、ちょうどお天気雨が降っていた。それから窓の下に視点を落とすと、充電していたミクロフォンにメール通知が来て光っているのが見えた。
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