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メールには、テンペスト・イン・ア・ティーカップの近くの住所と願い事、“ありがとう、あなたの名前を教えて“というような伝言がつづってあった。ぼくは、すぐさまその住所のところへ行くため部屋のドアを開けようとしたが、そんなときに限ってクウタがぼくに絡んできた。
おい、こんな遅くにお出かけかい、門限の21時までにあと45分だぜ。
ぼくはしかたなく、クウタに今まで起こった内容を話し、これから伝言で知った住所へと行くことを教えた。すると案の定、クウタもいっしょについて行くことになってしまった。
クウタは慣れた手つきで学校の裏門のカギを開けると、ぼくを手まねきして先陣を切っていく。レインコートを着たぼくとクウタは、ある小さな家の前で止まった。
ああ、たしかにここだね。
すいません、だれかいますか?
せっかちなクウタがインターホンを押しながら大声で呼びかける。するとすぐに、はーいと言ってある女性が出てきた。
なるほどその女性はたしかに、メテオ・フィーユの人工知能にそっくりな顔をしている。けれどもその姿は12歳ではなく、だいぶおとなびた雰囲気であった。
どちらさま?
その三姉妹のうちのだれかは見ず知らずのわたしたちが遅い時間に訪ねてきたのがとても不思議そうで、メテオ・フィーユが天気予報でくもりのときに見せるような困った表情を浮かべていた。
おれはクウタで、こっちはメア!
あのう、遅くにすみません。実は、メテオ・フィーユから伝言を頼まれて。
クウタとは反対に、ぼくはなるべく迷惑がかからないように慎重に話しだした。
伝言の内容は、三姉妹にリモートでのウィーピングテンペストの修理依頼だった。三姉妹の一番上のお姉さんはその依頼を快く受けてくれてぼくらに礼を言い、さらにほかの2人にも伝えておくとのことだった。
ふう、これでこの長い雨もやっと止まるかな。
ぼくがそう思ったのはどうやら甘かったようで、それからというもの、人工衛星からでも通信が届くように設計された“コップの中の嵐”へメテオ・フィーユたちがすぐに通信をしてしまい、クウタの冗談を聞いては泣き笑いするから、毎日お天気雨が続いていたんだ。
いったいいつになったら晴れることやら。
おしまい。
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