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「いやぁ、カラオケってなんか凄いんだなぁ」
「あぁ」
その場で解散となったので、俺は真琴と共に帰路についていた。
碌に歌は歌わなかったが、以前の俺なら絶対に行かなかった場所だ。
少し考え深いものはある。
その時、ふいに真琴の携帯電話が震えた。
かかってきた電話に、真琴は画面を一瞥し、すぐに視線を逸らす。
最近、何度も同じ場面を見てきた。
その度に俺が「出なくていいのか?」と聞くが、真琴は笑みを浮かべて「大丈夫」とだけ返すのだ。
今回も同じように尋ねようかと口を開いた、その時。
背後から不意に声がした。
「まーことっ!」
嬉しそうな、弾んだ声に足を止める。
真琴の知り合いなのかと振り返ろうとした俺だったが、次には前を向いたままの真琴に手首を掴まれた。
そして…
「…奏一、走るぞ」
「は?」
理由を尋ねる暇もなく、真琴が地を蹴り付け駆け出す。
掴まれた俺はなす術なく引っ張られていった。
つーか、相変わらず走るの速…っ!
もつれそうになる足を、殆ど意地で動かす。
というか何故今、こんなに全力疾走をしているのかを知りたかった。
「おい真琴…!一体なに…っ」
言い終わる前に、前方に現れた3人の黒スーツの男たちに急ブレーキをかける。
ガタイのいいそいつらは、まるでSPか何かのようだ。
もう何がなんだか、訳が分からない。
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