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「お前、御厨真琴って知ってるか?」
「え」
尋ねた途端、目を見開いて固まる陽介に俺は眉を寄せる。
「なんだよ」
「あ、いや…。お前が誰かに興味持つとか驚きで…。つか名前知ってることもレアだよな」
「お前は俺をなんだと思ってんだ」
失礼なやつだとは思うが、そこまで否定できないのも事実である。
とにかく他人に興味がないから、クラスの席順も自分以外をあまり把握していないし、まず名前も顔も碌に覚えない。
「お前が誰かに関心を持つとは…、父さん嬉しいよ…」
「うぜぇ」
足を蹴ってやると、陽介はケラケラ笑った。
ほんとこいつは。
高校生になって見た目が大人びてきたくせに、中身は中坊の時とちっとも変わらない。
「…で?知ってんのか?あいつのこと」
再度尋ねると、陽介はあっさりと頷いた。
「真琴って目立つし、有名人ってやつ?それに偶に野球部にスケットで来たり、体育の時とか話したりするから」
「体育?」
「真琴、隣のクラスだから体育で一緒になるんだよ。種目は選択式だから、奏一とは偶々重なってなかったんだな」
それから話を聞く限り、人気者で、周りにキャーキャー言われるというよりは、みんなでワイワイするタイプ。
部活は特に入ってなくて、偶に運動部に混ざったりしているらしい。
プライベートなことまでは、陽介は知らないようだ。
「結構みんなそうじゃないか?学校ではみんなと仲良いけど、あんま学校外では遊ばないらしいし」
「なんで」
「真琴が断るんだよ。なんか家の手伝いとかなんとかって。あいつの家、結構貧乏なんだって」
「…そうか」
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