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道路を緩やかに走る、一台の高級車があった。
運転手付きのその車の後部座席。
まだ21と大分若いが、それでも身に纏っているスーツを完璧に着こなしている男性がいる。
それはスタイルの良さや整った顔立ちもだが、彼が出す雰囲気が成す技であった。
「はぁ、やっとひと段落したよ」
そう言って後ろにもたれかかる彼に、運転手が「お疲れ様でした」と声をかける。
それには男性に対する完全な忠誠心が見て取れた。
「ずっと怒涛のように忙しくて、全然時間を作れなかったからなぁ」
そう言って彼は頬杖をつき、窓から外を眺める。
そしてその瞳はここにはいない誰かの姿を映し、すっと細められた。
整った顔に、綺麗な微笑みが浮かぶ。
「早く会いたいよ、真琴」
心底愛おしそうに彼、陸伊織は囁いた。
長いこと会えずにいた愛しの相手に対しての想いが膨れ上がっていく。
この数ヶ月間、どれほどその存在を焦がれたことか。
やっと会いに行くことができる。
そしたらまた、骨の髄までぐずぐずに可愛かってあげるからね。
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