転機

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「お前…、マジで馬鹿だろ」 「あはは、よく言われる」 もう怒ると言うより呆れてしまった。 何かを言い返す気力もなく、脱力する。 別に、口を挟んだのは正義感云々でではない。 単に気に入らなかっただけだ。 不意に中学の頃の記憶が蘇る。 俺が歌を歌わなくなった時、周りのやつらは態度を翻して、散々影で色々と言っていた。 馬鹿にされたと思った。 酷く屈辱的で、目の前が真っ赤に染まった。 そして気付けば、俺は俺を笑った男子生徒に殴りかかっていた。 自分をこけにされることが、何よりも嫌いだ。 相手に自分を弱いと思わせたくない。 同情も嘲笑も大嫌いだ。 「おい、そっち昇降口じゃないぞ?」 隣を歩いていた御厨が声をかけてくる。 図書館に向かうのだと答えれば、きょとんとされた。 別に放課後図書館に行くのなんて不思議なことではないが、きっとこいつの頭にその選択肢はないのだろう。 「まだテスト大分後だぞ?」 「別に勉強するわけじゃない」 「じゃあ読書?成瀬が?」 「おい。なんで意外そうなんだ」 むかついて御厨に顔を向けて、俺は息を飲んだ。 御厨が此方をジッと見つめていたのだ。
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