プロローグ

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音にはそれぞれ色がある。 赤、黄、青と、それはカラフルに様々な色彩を帯びる。 それらは生まれた時から、俺の目の前に広がっていた。 「よっと!」 背中にギターケースを背負った少年は、重力など感じさせない程身軽に塀を飛び越える。 その身のこなしに近くにいた3、4人の小学生たちが「すげー!」と感嘆の声を上げた。 そのまま少年は商店街の中を駆けていく。 「おかえり〜。コロッケ持ってきな〜」 「ありがとう!」 「代わりにまた歌、聞かせておくれよ〜」 揚げ物屋のおばさんがそう言って笑みを浮かべる。 少年は了承するように手を振って、再び駆け出す。 今日は黄色が綺麗だな。 天気も良くて、木々を揺らす風が心地良い。 小さい噴水の設置された公園に少年が辿り着くと、ベンチに座っていたおじさんが「お!兄ちゃんまた歌ってくれんのっ?」と嬉しそうに声を上げた。 噴水の縁に乗り上げ、少年は年季の入ったアコースティックギターを取り出す。 旋律を奏でよう。 どこまでも自由な旋律を。 歌は、世界をカラフルにする。
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