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登校中、女子生徒からの視線を感じ成瀬 奏一は舌打ちを漏らした。
人から意識されることが鬱陶しい。
こんな無遠慮にジロジロと見てきて、セクハラじゃないのかよ。
そう言ってやりたいが、言ったら言ったで自慢だなんだと反感を受け、更に面倒なことになるのは分かりきっている。
俺はただ、放っておいて欲しいだけなのに。
奏一は整った容姿をしており、学力や運動能力も高い。
それによって、本人の望まないところではあるが、学校では彼に好意を抱く女子生徒たちが多くいた。
何故話したこともないのに恋愛感情を抱くのか、まったく理解ができない。
女は群がる生き物だから、周りに便乗してただ楽しんでいるだけではないだろうか。
要は恋をしている自分に酔いしれているのだ。
此方からしてみれば、いい迷惑でしかない。
この世界はモノクロだ。
なんの面白味もない、ただ煩わしいものばかりが蔓延っている。
俺はいつまでこんな息苦しい日々を続けなければならないのだろう。
時にそう考えて、途方に暮れてしまいそうになる。
昇降口へと向かう道すがら、ふと音楽室から合唱部の歌声が聞こえてきた。
それに奏一は再び舌を鳴らす。
歌は嫌いだ。
それは俺にとって、ただの足枷でしかない。
多くある世界中の煩わしいものの中で、何よりも重い足枷だ。
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