転機

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聞こえてくる歌声をかき消してやりたかった。 さっさとここを離れようと、昇降口への道のりを急ぐ。 その時だった。 「セーフ!」 「…!?」 頭上に影がさした。 咄嗟に顔をあげれば、優に2メートルはある塀を飛び越える男子生徒の姿が瞳に映り込む。 驚き立ち尽くしていると、男子生徒は軽やかな身のこなしで奏一の目の前に着地した。 「おー間に合ったー。時短成功!」 そうして顔を上げた男子生徒と、パチッと目が合う。 大きなアーモンド型の瞳に、奏一は目を瞬かせた。 なんだ…、この野良猫みてぇなやつは…。 そう思ったのも束の間、相手はペコッと頭を下げ、すぐに走って行ってしまう。 男子生徒の背中では、ボロボロのギターケースがゆさゆさと揺れていた。
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