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「奏一くんっ。この後一緒にカラオケ行かないっ?」
業後、昇降口を出たところで男女5人の集団に声をかけられた。
無言でいると、女子生徒が更に言葉を続ける。
「今から他校の子たちと合コンなんだけど、男子が1人来れなくなってさぁ〜」
化粧の濃い、やたら甘ったるい匂いのする女だ。
その匂いにより一層不快感が込み上げてくる。
俺は一人として名前も知らないというのに、何故こんな親しげに話しかけられなければならないのだ。
一刻も早くここから抜け出したかった。
合コン、ましてやカラオケなんてまっぴらだ。
「あ、そういえば!奏一くん、歌うまいんだよね!」
「…っ」
別の女子生徒がそう声を上げた。
その瞬間、ブワァッと何か黒いものが湧き上がってくる。
「あ、なんかそんな話聞いたことある!」
「すごい!聞きたい聞きたーい!」
勝手に盛り上がり出す彼らに、激しい嫌悪感を覚えた。
プチンと何かが切れる音がする。
堪え切れず目の前で交わされる会話を遮ろうとした、その時。
「わー危なーい!」
「!?」
叫び声がしたと思ったら、背中に衝撃があった。
そのまま踏ん張り切れずに落ちて来たもの共々地面に倒れ込む。
「き、木から何か降って来た!?」
「きゃー!奏一くーん!」
なんだ?
何が起こっている?
唇に柔らかい何かが触れていた。
状況が読めずに目を開けるも、目の前は何かに塞がれたように薄暗い。
いや、至近距離に誰かの顔がある。
「…っ!?」
いつの間にか俺は、降って来た“誰か”とキスをしていた。
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