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ケース1️⃣ 前世覚醒
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
「いらっしゃ〜い‼︎」
快活な声が、青空の下に響き渡った。
ここは、僅か六畳程しかない広さの、とある店舗。
表のレトロな看板に、黄色字で
『タコ焼きハウス エリーゼ』
と、書いてある。
狭い店の中は、やや熱気が立ち込めており、正面の壁には数枚のメニューが貼られてあった。
たった今、店に入ってきたばかりの高校生らしき男女のカップルが、やや遠慮気味に立ち尽くしている。
このカップルに、先程勢いよく声を掛けた店主がカウンター内から、その様子を伺っていた。そうしながらも手際忙しそうに、熱気ある鉄板の上で、器用にタコ焼きをクルクルと焼き返していく。
この店主、年齢40代ぐらいの婦人で、顔の皮膚は鉄板焼きのせいで、ほんのり薄茶色に焼け、首から掛けているタオルで時々その顔を拭うのであった。
カップルは、メニュー表を眺め思案している。
僅かな時間ではあったが、店内はタコ焼きの焼ける音だけがその間をもたせていた。
調理しながら、カップルと対峙している店主。やがて、
「何にします?」
と、カップルに投げかけて、沈黙を破った。
それに反応して、いよいよと急かされた感じで、女子高生のほうが、
「あ、じゃ私、揚げ・・タコ焼き、で。」
と答えた。
店主のおばさんが、
「揚げタコ、一つね。」
と注文を繰り返し、その後チラリと今度は男子高生のほうに目を向けた。
男子高生は、次は自分の番だと気がついて、ピリリとし戸惑いながらも、
「あ、じゃあ、俺も同じヤツで。」
と答える。
店主のおばさんは、
「揚げタコ、2つって事ね。」
と復唱した。そして、
「持ち帰りで良いかしらね?」
と追加で聞いた。
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