35人が本棚に入れています
本棚に追加
カップルは、コクリと頷く。
そして女子高生は側にあった小さな丸椅子に腰掛け、男子高生は端の棚の雑誌をパラパラとめくる。
それから男子高生が、そっと女子高生の耳元に囁いた。
「ここのタコ焼き、美味しいの?」
女子高生も、蚊の羽音よりも小さな声で返した。
「美味しいって噂だよ。」
それを聞いても男子高生は、不信な顔をする。更に小声が続いた。
「でも、何か愛想がないじゃん。他に美味しいタコ焼き屋の店って、あるよね。」
女子高生が、続けて囁く。
「この店が良かったの。」
その時カップルは、何やら気配を感じたので振り返ってみると、カウンターの中から、こちらをじっと見ている店主と目があった。
カップルは、慌てて苦笑いで返す。
再び店内は、タコ焼きが調理される音だけが続いた。
それから、10分も経たないうちに、
「はい、タコ焼きできたよ〜」
と、威勢の良い店主の声で、カップルはまたピリリとした。
出来上がったタコ焼きを女子高生が受け取り、側にいた男子高生へ渡す。
「じゃあ、揚げタコ焼き2つだから、ちょうど1000円ね!」
と金額を言われて、すぐさま女子高生がお金を支払った。お金を受け取る店主。
「ありがとうね!また、よろしく〜。」
まるで、男の店長よろしく、ハキハキとした挨拶でお礼を言う店主のおばさん。
男子高生は、タコ焼きの袋を手に下げて、早々と店を出ていこうとしていた。
カウンター越しから、似合わない笑顔で見送る店主。
何故か、後に続いて店から出て来ようとしていない女子高生に気が付き、男子高生が入口の外から振り返っていた。
女子高生は、緊張した面持ちで、まだカウンターの前に立ち尽くしている。
急いで連れ出そうと、男子高生が店内に戻ろうとした時、女子高生が口を開いた。
「あ、あの、・・占ってもらっても良いですか?」
何を言いだすのかと、呆気にとられる男子高生。
その時、店主おばさんの目が、ギラリと鋭く光った。
「どこかで、聞いてきたのかい?」
最初のコメントを投稿しよう!