35人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、ある高校の体育館。
フワッと宙を舞うバスケットボール。
突然、それを長くしなやかな指が掴んだかと思うと、勢いよくバスケットゴールへ叩きこんだ。
そのバスケットボールをまた手にすると、器用に手の平で転がし、こちらを振り返る男がいる。
バスケットのゴールがそのまま、頭につくかと思う程の高身長だ。その男は、シュートを見ていた、もう一人の男に話しかける。
「おい、貴志。今の見てたか?」
それをやや隅のほうで見ていた男が、嫌そうな顔で答えた。
「見てたよ。」
この男も、高身長だった。
名前は、秋原 貴志。
この高校の生徒で、高校2年生。
再び、バスケットボールを持っていた男が、話しかける。
「なあ、お前も一緒に、バスケやらないか?」
この男の名前は、森山 昌也。
同じ高校2年の同級生で、友人である。
誘われた貴志は、全くその気がない素振りをしていると、
「よっ。」
という掛け声とともに、勢いよくバスケットボールが投げられ、見事に貴志の顔に直撃するのだった。
ゴスっ‼︎
「痛ってぇ‼︎」
貴志は声を上げながら、その場によろめいた。
慌てて申し訳なさそうにしながら、昌也が駆け寄ってくる。
「悪い、悪い。すまん。」
貴志は自分の顔を押さえ、昌也を睨みつけた。
「何するんだよ‼︎」
昌也は、謝り続ける。
「本当に、すまん。まさか本当に取れないとは。」
貴志は、痛みと怒りを合わせた気持ちを露わにした。
「だから言ってるだろ!俺は、お前みたいにスポーツなんて出来ない、運動音痴なんだから。」
昌也は、ボールが当たった部分に手を当てながら、心配した様子で見守る。
「本当に、悪かった。」
最初のコメントを投稿しよう!