ケース1️⃣ 前世覚醒

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呼ぶ声の主は、家の奥からもすぐに見えた。 女性と子供が立っている。 「はい、は〜い。」 そう言って店主のおばさんは、二人の前まで近づいた。 女性はまだ若く、20代後半ぐらいに見えた。子供は、幼児の年長ぐらいで男の子。 女性は少しオドオドしながら、申し訳なさそうに、 「あの、すいません。たこ焼きを一つ。」 と言った。 店主のおばさんは、慣れた感じで、 「は〜い、たこ焼き一つね。」 と繰り返す。そうしながらも、既にテキパキと手が動きだしていた。 鉄板に火が入り油が敷かれ、生地が流し込まれていく。 女性は子供の手を握ったまま、じっと立っている。 一見、店主はたこ焼きを焼く事に集中し、必死なようにも見えたが、実のところは額や後頭部さらに体のあちこちに、まるで幾つも目があるかのように辺りと、女性と子供を観察しているのだ。 その視線をあたかも感じとっているかのように、女性は緊張した面持ちで、じっと立ち尽くし声も発さずに、焼きあがっていく鉄板のほうを見つめていた。 子供は女性に手を繋がれたまま、この僅かな時間も退屈そうにその場で歩き回ったり、体を斜めに動いてみたりしている。まるで、紐で繋がれた犬みたいな状態だった。 そうしている間にも、立ち上がる湯気や熱気とともに、たこ焼きが焼かれていく音だけが忙しそうに騒ぎだす。 店主は、先が鋭利に伸びたアイスピックを握り、手慣れた手つきでたこ焼きを次々とひっくり返していくのだ。 店主と客は一言も会話する間もなく、たこ焼きが出来ていった。 「はい、お待ちどうさま!」 そう言って店主がたこ焼きの入ったパックをビニール袋に入れて、女性へ差し出した。 女性は、一瞬ハッとした感じだったが、その場から一歩二歩と前へ歩み出てたこ焼きを受け取る。 「500円だよ!」 店主が投げかけた。
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