君が死ぬまであと5分

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 高松仁花(にか)、享年十四歳。  彼女はこの日、閑散とした住宅地にある自宅で、家に押し入った男に刺殺された。両親は弟妹を連れて遊園地に行っており、家にいたのは風邪で休んでいた仁花一人だった。  目撃者がおらず捜査は難航したが、駅の防犯カメラの映像と、現場に落ちていた毛髪のDNA鑑定により、間もなく容疑者が逮捕された。  犯人は、窃盗の前科のある若い男だった。  空き巣の常習犯だったその男は、人がいないと踏んで侵入した一軒家の台所で被害者と鉢合わせし、顔を見られたことに動揺して持っていたナイフで背中を刺したと供述している。  二階の自室で寝ていた仁花は、水分補給のために下りた階下で運悪く空き巣に遭遇してしまったのだ。  逃げようとする少女を追って背後から刺したこと、凶器を事前に用意し、犯行後にそれを持ち去り証拠隠滅を図っていることなどから、犯行は極めて悪質とされ、被告は厳罰に処された。男は今も刑に服しているが、失われた少女の命が還ってくることはない。  そう、タイムマシンでもなければ。
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