第一章 一.

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第一章 一.

 日本にはおよそ八万の神社があるというが、東京都にはそのうち一四五〇ほどがあるとされている。 「蒼早(あおさ)くんは知っていた?」 「八百万(やおよろず)の神というやつか」 「まあ、そうね。私もそこまで詳しくはないのだけど」  和室で、蒼早という名の少年と眼鏡の女性が対面して座りながら話をしている。とはいっても、少年はゲーム機を手に、女性は机の上に広げた紙にペンを走らせており、互いの顔を見ているわけではない。 「じゃあ准勅祭社はわかる?」 「散々聞いたよ。元々十二あったものを、十に決め直したんでしょ」 「それが東京十社ね。で、神田がここだから……、できた」  キュッ、と丸を描き、ペンを持った手を紙から話す。少年はゲーム画面を一時停止で止めると、彼女の方を見た。 「地図、できたの?」 「ええ。ほら、見て」  紙は地図。ペン先を横に置くと、彼が見やすいようにくるりと紙の向きを変える。  赤い十の丸が点在している。それは、十社に印をつけたもの。 「我が“ヒナゲシ会”を結成する“ウラガミ様”は、この十社を代表することになるわ」  “ヒナゲシ会”。東京十社、それぞれの神を降ろした者を“ウラガミ様”と称し、各神社に応じた能力が授けられた彼らにより、結成された組織である。 「自慢げにするのはいいけど、沙雪(さゆき)。今日は約束があるんじゃなかった?」 「えっ? もうそんな時間?」 「昼の一時半」 「大変、約束は二時なのよ、もう出なきゃ」 「のんびり地図なんて作ってるから」 「彼女の話を聞くときに必要だからよ。もしかしたら、“死気(しけ)”が関係しているかもしれないから」
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