第五章 四.

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「ぼく、警察に行かないとっ……」 「警察? なんで」 「そんなの……あ、携帯をかしてくれませんかっ」 「持ってない」 「え!?」 「悪かったな、持ってなくて」  この時代に携帯を持っていないなんて、という顔をされた汐吉は不機嫌そうに口を尖らせる。 「私のでよかったら、どうぞ」  沙雪がすぐに携帯を取り出して差し出した。 「あ、ありがとうございます。これで通報できるっ……」 「通報?」  慌てたように画面を操作しようとする青年と彼を囲む四人の耳に、聞いたこともない―……いや、映画でしか聞いたことがないような、低くどことなくリバーブもかかっているような男性の大きな声が聞こえてきた。 「ワカバ、ワカバ、ワカバ ドコダァアアァアア!」  声の主は鳥居の近くにいる。目が悪い沙雪は“んんん”?と目をこらすが、その他の三人、特に汐吉と蒼早はソレ(・・)が何であるかを見て察した。 「……なあ、あれは?」 「亀戸天神社の宮司さんなんですけど、今朝から様子がおかしくて……」  となれば、金髪の彼は“ワカバ”。
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