第五章 四.

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「まずは動きを封じる必要があるわね。蒼早くん、お願いしていい?」 「ああ。そのあとは沙雪だね」 「ええ。そしたら喰代さん、お願いしますよ」 「分かった。……あ、二人は動くなよ」  電話をする紅乃と、立ち尽くしている若葉に言うと、汐吉、沙雪、蒼早の三人は死気に憑かれた松ヶ枝のいる鳥居の方へと駆け出す。 「沙雪、亀戸天神社で都合のいい場所ある? 誰かを巻き込まないような場所」 「巻き込まない……鳥居を入って少し先に橋があったはずよ、“移動”を使うならそれがいいわ」 「了解」 「……橋があるってことは、はさみうちできるかもな」 「はさみうち? ……なるほど。喰代さん、あっちにも入り口があるんだけど、行ける?」  あっち、とは、本殿を正面に見て東側にある入り口のことだった。やや距離はあるものの、そこから敷地内に入れば、本殿側へ出る。  つまり、鳥居の方から沙雪が、本殿側から汐吉がいけば、もし何かがあっても対処できるだろうというものだった。 「気を付けて」 「お互いにね」  汐吉の気遣う言葉に沙雪はうなずく。  彼は、沙雪が教えてくれた横にある入り口の方へ急いで回り込んだ。
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