第六章 一.

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「っ、しょ、っと!」  そのまま背中に手をあてると、橋の近くにいる沙雪のほうへ押し飛ばした。  カラン、という音が鳴る。見ると包丁らしい刃物が松ヶ枝の手から落ちたところだった。 「げ、右手にあんなの持ってたのかよ」  蒼早はすぐさま刃物のほうへ向かい、誰にもとられないように足で踏みつけた。  そうしている間に、沙雪は松ヶ枝の右腕を両腕で抱えるようにしてとらえた。 「グ、ガ、ウラガ、ミ、ナン、デッ」 ―ウラガミのこと、分かるの?  これまで、“拘束”してきた死気に憑かれた人がそんなことを言うことはなかった。  “死気”が、“ウラガミ”を認知しはじめている。 ―なぜ?  認知したところで死気にはどうすることもできないはずだが、明らかに変わっている。と、考えにふける沙雪に隙ができたのを松ヶ枝が逃すはずもなく。 「松浪さん!」 「え、きゃあっ!」
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