第六章 二.

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「死ぬに気力とかいて、死気。黒い煙で……、それに憑りつかれるというか、支配されると正常じゃなくなる。暴走するんだ。そういう人が起こす事件を解決するのがヒナゲシ会の役目。警視庁に新設された、妖対策課っていうところに所属することになる」  彼は汐吉同様、淡々としながらも、説得力のあるワードを次々と出す。 「さっき、松ヶ枝さんという人もそうなりかけていた。それを僕たちウラガミが鎮めたってこと」 「ウラガミが……」  若葉が考え込むように一言発する。沙雪は畳みかけようとして口を開いた。 「藤枝さん、ライブをしてらっしゃるんですよね? 歌われる方って耳がいいと思うんですけど」 「入らない」 「へ?」  亀戸天神社のウラガミ様の能力は“傾聴”。だから相性はぴったりだ、といおうとした沙雪だが、予想していなかった返事にかたまってしまう。 「ヒナゲシ会には入れません。ぼくはぼくで、やることがたくさんあるので」 「え、えっ」  沙雪は分かりやすくうろたえる。 「では」  そういって若葉が帰ろうとしたため、汐吉は思わず腕を掴んだ。
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