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「……なんですか?」
「連絡先、教えてくれ」
「……携帯持ってないのに?」
「固定電話くらいある。……これ、店の名刺。電話番号のってるから」
「あ、私も! これ、いつも持ち歩いてるんです。ヒナゲシ会に入る気になったら、ぜひ」
「……来ないよ、そんな日」
二人の名刺を受け取りながらも、若葉は低い声でつぶやく。
「喰代さんは、ヒナゲシ会じゃないのに熱心なんですね」
「……ウラガミ様、だからな」
手放しでほったらかすわけにはいかない、という意味だ。
若葉は、ふ、と小さく微笑み、もらった紙をポケットへとしまう。そのまま、彼は鳥居から外へ出て行ってしまった。
その後ろ姿を見ていた蒼早が、ポツリとつぶやく。
「……ギター、背負ってないね」
「……え?」
「あっ、本当だ」
確か、真菅からの情報によれば“いつもギターを背負っている”とあった。ところが、たった今見送った彼は手ぶらだった。財布等の貴重品がポケットに入っているとしても、いつもとは違うようだ。
「何かあったのでしょうか」
「そうかもしれないな」
沙雪と汐吉が視線をあわせながら会話をする。紅乃と蒼早は、何も言わず若葉の後ろ姿を見送っていた。
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