第六章 四.

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「和氣さんが言っていたでしょう。富岡八幡宮といえば、相撲とか地図とか」 「どれにも関係してないじゃん」 「そんなことないわよ~。相撲といえば国技、国技といえばスポーツ。そして、布瀬さん!」  じゃん、とばかりに、布瀬快次という青年の顔写真を蒼早に見せる。  釣り目で、黒い瞳に黒い短髪、どちからといえばスポーツマンのような外見だ。制服姿からは爽やかさも伺える。当時のニュースのようである。  つまり、スポーツといえば布瀬快次、というわけだ。蒼早は呆れたように苦笑いを浮かべた。 「……マジカルバナナ?」 「そう、連想ゲーム! ……って、よく知ってるわね」 「あのさあ。ヒナゲシ会って、由緒正しい歴史ある組織なんでしょ。そのメンバーを連想ゲームで適当に選んでいいわけ?」 「しょうがないじゃない、富岡八幡宮絡みで有名な人って布瀬さんくらいよ? それに、適当じゃないわ。ウラガミ様になれるならなっているはずだし、なれないならウラガミ様にならないだけよ」  まるで言葉遊びだ。蒼早は仕方なさそうにため息をついた。 「藤枝若葉は加入しないといっているのに、その布瀬とやらをヒナゲシ会に入れさせることができるの?」 「……えーと」 「黙っていようと思ったけど。沙雪が、“傾聴”のことを言おうとしたら藤枝は帰っちゃったでしょ。あれ、絶対本人が気にしてることだったよ」  つまりは、ライブ。歌を、だ。 「沙雪が言うことが裏目に出てるって分かってる?」 「……蒼早くんは、いつも、正しいものね」 「……?」  蒼早はゲームの画面を見ていたが、ふいに沙雪の様子が変わった気がして、ようやくゲーム機を置いて彼女の方を見た。
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