第一章 三.

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「あら、もしかして喰代汐吉さん?」 「え、あ、はい」 「なら手伝って」  なぜ名前を知っているのか、と聞く暇もなく、彼女はすぐに鋭い視線で言う。 「てつだ……は?」 「あなたには見えてるんでしょ? この黒いものが」 「はぁ……、ということは、あなたも……?」  これが見えるのか。と聞こうとしたものの、眼鏡の女性は暴れそうになる女性の腕を掴むのに精いっぱいなようで、汐吉の表情から疑問を汲み取る余裕はなさそうだ。 「っ、と、自己紹介は後でするわ。私ができるのは拘束だけ。浄化、できる?」  さっぱり状況がのみこめない汐吉は、どうやらこれは、自身の嫌う面倒そうな状況であると悟った。拘束や浄化というのも意味が分からない。  なぜなら、父親以外にこの状態の人物に会ったことはなく、しかも死因だったかもしれないものが“黒い煙”だとは思ってもいなかった。 「やり方、わからないんですけど」
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