第六章 四.

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「お母さんが、よくやってくれたんだ。僕がすねたら、そういじけないで、って」 「……私がすねているとでもいいたいの?」 「そうじゃないけど。……布瀬の件は、真菅や喰代にも相談してからの方がいいと思う。喰代は話が上手いから彼についてきてもらおう」 「喰代さん、真菅さんの話では人見知りらしいけど……全然よね」  大人しく頭を撫でられながら沙雪がつぶやく。蒼早もうなずいた。 「大人っていうのもあるだろうけど、人見知り特有の“要点を話す”タイプだから、分かりやすいんだよね。きっと」 「……わかった。それなら、明日にでもカンテラに電話をしてみる」 「うん。……僕のこと、許してくれる?」 ―年上の頭を撫でておきながら、この子は。  沙雪は、蒼早の問いに、ゆっくりうなずいた。 「ええ。私も、ごめんなさいね。つい、昔のことを思い出して……」 「……沙雪の敵は、ここにはいないよ。ヒナゲシ会にはいないから」 「ありがとう、蒼早くん」  いつもは母と息子のような二人が姉弟にでもなったかのように、距離が縮まる。藤枝若葉に邂逅した日の夜は、そうして更けていった。
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