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第六章 五.
翌日、月曜日。開店前の準備のため、店内で汐吉が準備をしていると電話がかかってきた。沙雪からだった。
『こんにちは、喰代さん。今いいですか?』
「ああ、平気だ。どうした」
『藤枝さんの件はともかくとして、富岡八幡宮のウラガミ様も同時に探したいなと思いまして』
「ふうん? 心当たりでもあるのか?」
『ええ、まあ。布瀬快次さんという方が、ウラガミ様ではないかと思いまして』
昨夜、蒼早と言い合争いに発展してしまった内容を素直にすべて話す。
汐吉は、痴話げんかを聞かされている気分になりながら相槌を打った。
「三十歳で交番勤務……、今は昇進しているかもな。三十で巡査部長ならノンキャリアだろ。真菅から聞いたことがある」
――『同じ警視正でも、キャリアかノンキャリアで年齢は変わる。私はキャリア組だから早いんだ』
その話が出たのは、汐吉が真菅に対して砕けた言葉遣いをしていたのを、“他の人に同じようにするなよ”という意味で注意したときだった。今でも、汐吉は敬語を使うことはあまりないため、意味がなかったかもしれない。
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