第六章 五.

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 沙雪に連絡をし、木曜日に沙雪、汐吉、蒼早で布瀬の家を訪ねることになった。路上に三人がいるのは、そういう経緯があってのことで、汐吉は真菅からもらったメモを目で追いかける。 「えーと、ソルティアウト、ソルティアウト……ここだ」  “ソルティアウト”という名前のマンションの前で立ち止まる。  富岡八幡宮の近くで、川沿いにあるそこは、白っぽい色をした建物だった。 ごく普通のどこにでもあるマンションのように思われた。 「四〇三……うん、あってる。表札は、布瀬だな」  オートロックではないため、ここまですんなり来た。良くも悪くも、中に本人がいるかどうかは分からない。 「とりあえず、私がインターホンを押してみますね」  沙雪がいい、汐吉がうなずいたので、彼女が指先を伸ばす。チャイムの音が確実に部屋に響いたのが聞こえる。数秒してから、 「はーい」 とインターホンから声がした。男性の声だ。
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