第七章 一.

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「はい。ヒナゲシ会というのは、東京十社のウラガミ様からなる組織です。警視庁に新しくできた妖対策課に所属して、能力を使って“死気”と呼ばれる悪いものを消したり、それに関わる事件を解決するために活動しています」 「シケとかなんでもいいっすけど、オレ、警察やめてるんす。もう関わらないって決めてるんで」  帰ってください。  そういいたそうな答えは、先ほどのインターホン越しと変わらないようだった。 「でも、富岡八幡宮のウラガミ様としてはあなたが最適だと思うんです。能力というのは“戦闘”でして、死気に憑りつかれてしまった人と戦うことができるものになります」 「死気が憑りついた人は暴走してパワーも普段とは桁違いになることがあるんだ。戦闘の能力があれば、対抗できるから」  蒼早がいつも通り沙雪の説明に補足をする。戦闘はいらない、といっていたのに、と沙雪は内心思いながらも、ヒナゲシ会のメンバーとして自身のフォローに回ってくれたのかと思うと頼もしくも思えた。 「オレがウラガミ様として最適なら、その根拠はなんっすか?」  沙雪は迷いながらも、あの強盗事件のことを話した。ニュースにもなり、快次のこともそれで知ったことを。 「強盗事件で犯人を逮捕したんですよね? だから……」 「……なら、なおさらオレはありえないっす。無理」 「どうして」  困ったように理由を尋ねる沙雪に、快次はしばし黙ったのち、仕方なさそうに話し始めた。 「オレが警察を辞めたのは……その強盗事件がきっかけっす」  その目は下を向いているものの表情は優しかった。
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