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第七章 二.
重いと思われた空気の中、沙雪が口を開いた。
「……なら、また明日来ます」
「え」
「何度でも来ます。ヒーローになれる素質のある布瀬さんに、“戦闘”の能力を継いでほしい」
「……だから、オレは犯人を取り押さえられなかったって……捕まえることは……」
もはや泣きそうになった快次の気をそらすかのように、汐吉が突然机を大きく叩いた。
「捕まえるのは布瀬さんの仕事じゃない」
快次は驚いた表情で彼を見る。
「捕まえるのは松浪さんの仕事だ、蒼早は移動範囲を限定させて足止めさせるのが仕事。布瀬さんの仕事は、“死気”にとりこまれて、意思に反して暴走してしまう人を止めるために戦うことだ」
自身はヒナゲシ会のメンバーではないのに、どうして沙雪たちの味方をするようなことを言い出したのか、汐吉は自分が分からなかった。だが、本心であるのは本当で。
「喰代さんの言う通りです。もし、私たちの誰にも、どうにもできない状況が来てしまっても、布瀬さんがいれば、その能力があれば、解決できるかもしれないんです」
そういわれて、汐吉は察した――というより、気が付いた。
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