第七章 二.

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 快次と同じように、自分も、逃げていた。自分に能力があるなんて信じられず、でも必要だといわれて、行動を共にするようになり、水品だけでなく松ヶ枝も浄化した自身の能力。  偽物ではなく、本物であること。沙雪や蒼早は、本当にヒナゲシ会の一員であり、ウラガミ様であるということ。 「これは、私の経験上ですが……、逃げることは何回でもできます。もし、布瀬さんが、自分にはできないって思うならもちろん、強制はできませんからやめていただいてもいいんです。でも……やる前から諦めてしまうのは、もったいないと思いませんか?」  快次へ向けられているはずのそれは、汐吉自身も言われているような気持ちになってきた。 「……そんなに、熱心に勧誘されたことないんすよ」  厳しい顔つきだった快次が笑う。 「……オレもヒーローになれるんすかね。難しいことはあまり考えらんないし、体力だけは馬鹿みたいにあるような、使い勝手が悪い男っすけど」  状況が好転しはじめた。快次が前向きになっている。部屋の空気も、夕方から昼間に戻りつつある。 「使い勝手がどうとか、モノじゃないから関係ない」 「そうよ! 布瀬さん、ヒナゲシ会に入ってくれるんですね?!」 「……オレ……」
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