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―やっぱり、ヒーローになりたい。感謝されたいとかじゃなくて、オレが、誰かを守りたい。誰かの役に立ちたい。ずっとあたため続けていた夢を、ようやく叶えられるのだろうか。そうなら、最初に、オレはオレのことを守ってやりたい。おやっさんなら、分かってくれるっすよね。
「……はい、ヒナゲシ会というやつに入ります。そこまでお願いされちゃ、かなわないんで」
「やった!」
快次がうなずく。沙雪の表情は一気に明るくなり、蒼早もようやく息抜きができるとばかりに口元をゆるめた。
「喰代さんはヒナゲシ会に入らないんすか?」
「え?」
自分にそんな話がふられると思っていなかった汐吉は面食らった顔になる。
「オレがヒナゲシ会に入ってウラガミ様になる……? のに、もうウラガミ様の喰代さんは入らないんすか?」
その素直な疑問に、再び三人は沈黙になる。
確かに、ヒナゲシ会に入らないかという勧誘をしに来たのにそのうちの一人は保留中ということは、腑に落ちないかもしれない。いや、腑に落ちないだろう。
「そう、だな。あー……俺は……」
――『逃げることは何回でもできます』
忘れようとしていた。父親と向き合おうとしていない自分が、この場にいてもいいのか。
自身の能力を、信じ切れていない自分が。
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