第七章 三.

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第七章 三.

 大学生の本分は勉学である。  そう口うるさく言われていた若葉は、あの日以来、母親の監視が厳しくなった。 「また神社に行ったら今度こそ許さないからね」 「……ごめん」 「外に出るのは大学に行くときだけって言っていたのに、それを守らないからこうなるのよ。面倒ごとを起こして。わかる?」 「うん……」  大学生になるまで、これが普通だと思っていた。  学校と家の往復のみが許され、塾は通信を行っているところを選び家で受講して勉強。部活に入ることもなければ、大学でもサークル活動は許されず所属もしていない。  うらやましかった。サークル活動ができる他の学生が。アルバイトをしてお小遣い稼ぎをする他の学生が。  自身には許されないことを、許されている他の人が。  サークル活動やアルバイトは隠れてすれば大丈夫だと思っていた時期はもちろんあったが、結局は知られてしまい、怒られる。その繰り返しで嫌気がさし、全てを諦めることにした。許されていないことをするのはいけないことだ。養ってもらっているのは本当なのだから、と。
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