第七章 三.

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「え? 藤枝さん、休学してるんですか?」  都内の大学、の構内にある教務課と呼ばれる場所で沙雪は対面した事務員に尋ねた。彼女は、快次を勧誘して二日とたたないうちにここへ来ていた。  相手はごく普通の女性で、カウンターではなくテーブルのある席へ通された沙雪は、衝立のある場所で彼女と話していた。 「正確に言えば、まだ届け出が出されただけなので、これからいろいろ手続きがあるのですが」 「休学……したい事情があるってことですよね」 「詳しくは私も……、警察の方ということなのでお話しますが、病気になったそうで」  沙雪がここへ来ているのには理由があった。若葉をヒナゲシ会に入れるべく、外堀を埋めようと考えたのだ。もっと若葉のことを知る必要がある、だから大学へ来て在籍している学部と授業がある校舎を尋ねようとしていた。  妖対策課の名前は信じてもらえない可能性があるため出してはいないが、警視庁所属であることを話し、信じてもらうことに成功した。 「診断書が欲しいと言ったので、また大学に来るとは思います」 「病気……、ですか」  亀戸天神社で出会ったときには、そこまでには見えなかった。あれから悪化したということだろうか。  そこまで考えたところで、先ほど事務員が言ったことに気付く。
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