第七章 三.

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「すみません、届け出が出されただけということでしたが、いつですか?」 「今日ですよ」 「今日?!」 「一時間ほど前ですね」  時計を見ながら彼女が言う。まだ午前中の今、もしかしたらまだ学内にいるかもしれない。 「もう帰っちゃいましたか?」 「ええ。本当に顔色が悪そうで……保健室で休憩したらどうかと言ったのですが」  保健室とは違う方向へ行ったらしい。 「バス停の方へは西門のほうが近いんです」  バス停にはもういない可能性が高いだろう。それでも、もしかしたら追いつけるかもしれない。病気なのだとしたら、万一が起こってからでは遅いことを経験上彼女は知っていた。 「ありがとうございました、またお伺いしてもいいですか?」 「ええ、はい」 「では、今日はこれで。失礼いたします」  席を立った沙雪は鞄を持って教務課の入っている建物を飛び出た。
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