第七章 四.

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「へえ、休学ね。それは予想外だったな」 「……え?」 「単に、お前が注目されなくなればいいのになーって思っただけだし」  へらへらと彼が笑う。若葉の顔はこわばる。胸の中がざわめき始めた。 「だってさ、俺より外見はよくないし? ちょっと頭はいいかもだけど、うまくもない歌でもてはやされててさ、つまんねえじゃん」 ―そんな理由で。  そんな理由で、ぼくを傷つけたの?  若葉は動くことができなくなってしまった。歌いたいのに歌えないときのように、怒りたいのに怒る声が出ない。  どうして、したいことができない。  黙ってしまった若葉を見た館山は、言い返さないのをいいことにさらに口を開く。 「フリーアドレスなら取り放題だもんな。メール、全部見てくれた? ホラー映画好きに聞いて良さそうなのをピックアップしたんだ」  自分に精神的な痛みを与えていたのはコイツだった。  だが、嫌がらせはメールだけではない。SNSでもなんでもあった。 「……メールは、館山くんが……?」 「ああ。メール以外はやってねえぞ? SNSのも見たけど、あれは俺じゃない。かわいそうだなあ、藤枝。俺だけじゃなくみんなから嫌われちまってさ」  母親にも、きっと。  若葉は思わず、館山につかみかかった。襟元をつかむ。
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