第七章 四.

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「……あ、なたは」 「離せよ」 「やめるつもりないのね、なら仕方ないわ」 「っ、あっ!?」  沙雪はふぅ、とこれみよがしに息をつくと、掴んだ腕をそのままひねりあげた。 「いででで!!」 「痛い?」 「いたい!!」 「その痛みはね、藤枝さんの痛みよりずっと軽いのよ。我慢しなさい」 「……まつなみ、さん」  痛がる館山に一切力をゆるめることなく、沙雪は離そうとしない。彼は苦悶に満ちた顔になる。 「そう、私、松浪。覚えていてくれたのね」 「もういいです、離して、やってください」 「いいの? なら、はい」 「っち、テメェ覚えとけよ!」  ようやく解放された館山は舌打ちをしながら沙雪をにらみつけて学内の方へと行ってしまった。 「あらあら、あんなこと言っていいのかなあ。一応、警察の関係者なんだけどね~私」 「……どうして」 「ん? ああ、ヒナゲシ会に新しく入る、ウラガミ様候補の布瀬さんっていう人に護身術を教えてもらったのよ。前より能力も使いやすそう――」 「そうじゃなくて」  明るく話す沙雪に対し、若葉の表情は曇っている。
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