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「どうして、ここに……ぼくを、助けに」
「……ヒナゲシ会に入ってほしくて」
「……ぼくは、特別じゃない。能力もない、ヒナゲシ会には入らない」
「それでも、入ってほしいの。助けたのは、単に、ああいう人が嫌いだからよ。少し聞こえちゃったんだけど、ひどいことされていたみたいね」
「……無視すれば、どうにでもなる」
「でも、痛みは消えない」
短い言葉に、地面を見ていた若葉は顔を上げた。真剣な、でも眉尻は下がった沙雪の顔がそこにあった。
「教務課で、休学届を出したって聞いたわ。あんな奴のために、あなたがそんなこと……」
「ぼくはぼくを守ろうとしているだけです。この世のすべてから、なにもかもから……」
――『かわいそうだなあ、藤枝。俺だけじゃなくみんなから嫌われちまってさ』
嫌われているのだから。
「神社にも、もう行きません。行けなくなったから、だから……」
タイミングがいいのか悪いのか、バスが来る。バス停の前で停車し、若葉はよろよろとバスへ向かう。沙雪は追いかけようとせず、立ったまま。
「藤枝さん。あきらめないでくれるなら、私は協力するから!」
バスに乗り込みながらそれを聞いていた若葉は、彼女をふりかえることも、返事をすることもなく奥の方へと行く。
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