第八章 一.

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 この一週間、沙雪や蒼早からは何も聞いていないし、カンテラにも電話は来なかった。なぜ、というのが正直なところではある。 「どうした?」 『今、お店の前なんですけど』 「え?」  見れば、確かにドアの前に人影がある。 『土日は定休日なんですね』  そう言いながら、目が合った若葉が頭を軽く下げた。 「あ、ああ……それに、夜しか営業しないから、どっちにしろ今は開けてない、んだけど……待って、数分だけ。ほんと数分」 『はい』  逃さないようにしたいのか、必死にいう彼につられ、若葉は素直にうなずいた。 ***
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