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「朝からこっち来るの大変だったろ。遠いし」
「いえ……」
「バターは先派? 後派?」
「どっちでも」
「そうか」
先にすれば食パンにバターの味がしっかりついていておいしいし、後でも熱にとけるバターがみたいならオススメではある。ほくほくにあたためたじゃがいもを割ってバターを溶かすのが好きならば、後のほうが気持ち的に満足するかもしれない。
「じゃがバターか……」
「? どうしたんです?」
「いや、なんでも。冬になったらメニューに入れてもいいな、と。じゃがいも丸ごと使えるし」
「いいですね」
トーストを作りながらじゃがバターのことを考えているとは思っていなかった若葉はクスクスと笑みをこぼした。
「このお店、営業中もこういう空気感なんですよね、きっと」
「知りたかったら今度は営業中に来てくれ。客として」
「……はい、分かりました」
そう会話をかわしながら、汐吉はパンが焼けるのを待つ間に野菜を手際よく切っていく。普段、軽食が頻繁に出ることは少ないが、自炊は最低限しているためなんなくできた。
―やっぱりもう少し料理する時間を増やさないとな。
一人暮らしレベルの料理の腕前で店主、というのは、他の飲食店をやっている店主や料理人たちに悪い気がしてきた。
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