第八章 一.

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「……はい、先にサラダ。これドレッシング、二種類あるから、好きなのを使え。フォークと紙ナプキンはここ」 「はい」 「お、トーストもできたな」  カウンターの上にミニサラダを置き、若葉が手元に動かしたあとでトーストもお皿に乗せて目の前に置いた。 「コーヒーの粉は……紅乃が用意してくれてるな、これを使うか」 「土曜日はやってないんですよね?」 「金曜日の片付けのときに、紅乃が月曜日に使う分を用意してくれるんだ。だからすぐできる」  紅茶は茶葉だからコーヒー豆のほうが準備に時間がかかる。それでも、作ってしまえばあっという間だ。 「ドリップコーヒーは楽なんだが、こういうときはサイフォンのほうがいいだろうな。真菅なら紙ドリップで淹れたコーヒーを出すところだ」 「それは、いい意味で考えても?」 「ああ。さっさとコーヒーを淹れてゆっくり話し込むのもいいけどさ。せっかく時間があるんだ、急ぎの用事もないんだろ?」 「はい」 「なら、これがいい。温度ってやつが感じられるぞ」  そう言いながら、若葉からは見えないところからカウンターの上にサイフォンを引っ張り出してくる。
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