第八章 一.

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 サイフォンは理科の実験でみたフラスコの上に筒みたいなものもある。これはロートと呼ばれるものだが、よく見れば筒の底に棒状にのびている。 「それで?」 「…………」  あまり物音をたてずに、フラスコからロートを引き抜くと、水をフラスコの中に入れはじめた。すぐに半分ほど水がたまり、火をつける。  何も話そうとせず、火を見つめる若葉にもう一度声をかけた。 「……なんで、ここに来たんだ?」 「……、……松浪さんに、喰代さんと話しておいで、といわれまして」 「松浪さんが?」  だったら連絡の一つくらいよこしておいてくれればいいのに、と思うが、もし事前に日曜日の午前中に来ると言われていれば、若葉へ日程を改めるよう交渉していたはずだ。そうなれば、今頃は寝ていたに違いない。 「なんで?」 「えっと……、……ぼく、ヒナゲシ会に入るか、迷っているんです。喰代さんは、保留中だけど入るつもりはあるから、理由を聞いてみたらどうかって。電話で、教えてくれました」
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