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「ぼく、ヒナゲシ会に入ったら、ウラガミ様になれたら……歌えますか」
おそらく、若葉が聞きたかったこと。
今は歌えないが、ヒナゲシ会に入れば可能かどうかを確かめたかった。
「歌える」
「っ……」
「死ななくていい。死ぬな」
汐吉の、ブレない意思の強さとまっすぐな視線に、若葉は体の力が抜けたように、椅子の背もたれによりかかった。
「……誰かに、保証してもらいたかったんです。ぼくのこと……ぼくは、生きるに値する人間だって……」
「価値は本人が決める。他人が決めるものは、あくまでも他人から見た評価にすぎない。藤枝さんは藤枝さんなんだろう?」
いうのは簡単だが、それを理解できるのは難しい。それでも、これまでの自分とは少しだけ変われた気がする若葉は静かに一度首を縦にふって肯定した。
「……ヒナゲシ会に入ります。入らせてください」
「……といわれても、俺はまだヒナゲシ会に入っていないからな」
「あ、そうでしたね」
「だから、一緒に入ろう。ヒナゲシ会にさ」
「……!」
カンテラに来て、初めて若葉の顔が明るいものになる。
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