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「やっぱりやめます、とか言わないな?」
「……言いません。男に二言はありません!」
先ほどとは違い、目つきがきりっとして口元は笑んでいる。
―変わろうと思えば、こんなにも変われる。
「なら、これからよろしく。藤枝さん」
「はいっ、喰代さん!」
感動的な挨拶のはずだが、汐吉はコーヒーカップに目を落とした。
「コーヒー冷めてないか?」
「え、あっ……」
「淹れなおす、待ってろ」
「の、飲みますよ! 冷めててもおいしいじゃないですか!」
「捨てないよ、俺が飲む」
「え!?」
さすがに自宅でもないのに、流しにザバァと捨てるわけにはいかない。
「サラダとかトーストはどう、食べられそうか」
「……喰代さんと話しつつなら」
ゆっくりなら食べられる、という意味だ。
「分かった。とりあえずコーヒー淹れなおそう」
「ぼくのせいで、すみません……」
「気にするな。松浪さんにも連絡しないとな」
若葉のこと、自分のこと。ヒナゲシ会に入ることを決めた、亀戸天神社と王子神社のウラガミ様。
汐吉は沙雪に蒼早、快次の顔を思い浮かべながら満足げにうなずいた。
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