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「うん、それいい。横向いて、そう」
早速写真撮影を始めようとしたとき、 “東京十社巡り”と書かれている看板のところで二人の女性がにぎやかに話をしているのが聞こえてきた。
「ほら、これだって、店長が言ってたやつ」
「へー、本当に十社あるんだね」
「……?」
気になった天芽が振り返る。鳥居近くにいたのは、趣味が寺社仏閣巡りの紅乃に、その友人である亜子だった。
「天芽ちゃん、どうしたの?」
「あ、いえ……」
よそ見をしている場合ではなかった、と天芽は再び瑞樹の方を向く。しかし、彼女たちの楽しそうな声は、やはり気になった。
―好きでもない撮影をさせられている私と、楽しそうに友達といる女の子……。
心のどこかで黒いものが蠢いた気がした。だが、きっと気のせいだ、やっかむのはよくないと自身に言い聞かせて、天芽はカメラのレンズに向かって微笑んだ。
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